子どもの発達

乳児期

はじめに
 生まれて間もない赤ちゃんは、もう人としての大きな特徴を備えていて、自分の周りの人たちとしっかり関わりを持とうとします。周りの大人が赤ちゃんに働きかけ、それに赤ちゃんが応えたり、逆に、赤ちゃんの方が周りの大人に働きかけ、それに周りの大人が応える、といった双方向のやりとりの中で、赤ちゃんの人としての関わりはどんどん育まれていきます。もちろん赤ちゃんにはまだ言葉はありませんが、ことば以外のさまざまな手段で、もう人らしいコミュニケーションをしているのです。一見まったく無力に見える赤ちゃんですが、持てる力を総動員してお母さんやお父さんとコミュニケーションを持とうとしているのです。

1. 新生児の能力について
 一昔前までは、生まれたばかりの赤ちゃんは無力な存在であると考えられていました。動物の赤ちゃん、たとえば馬の赤ちゃんは、生まれて数時間もすればしっかりと自分の足で立ち上がるのに、人の赤ちゃんは泣き声を出すのがやっとで、目さえもしばらくは見えない、と考えられていました。
 しかし、こうしたことが、赤ちゃんを十分に観察せずに誤って信じられていたことだということがわかってきました。最近の科学的な観察に基づく新生児の研究には目覚ましいものがあり、新生児の素晴らしい能力がどんどん明らかにされてきています。そうした研究をみながら、新生児がどうしてそんな能力を持って生まれてくるのか、なぜそんな能力を必要とするのかを考えてみましょう。

(1) 新生児の反射機能
 生まれたばかりの赤ちゃんが示すいろいろな反射については、以前よりよく研究されており、人間の本能的な能力の研究や中枢神経系の異常の発見などに貢献してきました。
 例えば、生後間もない赤ちゃんの手のひらに棒のようなもので軽く触れると、驚くほどの力でその棒を握りますが、これは学習によらない生得的な反射であることが知られています。また、脇の下から手をやり赤ちゃんを支え、足の裏が床につくようにして少し前に移動してやると歩くような格好をします。もう歩けるのかと思わせますが、これも反射です。このような反射は、本能的な能力としての無条件反射として研究の対象とされてきました。
 足の裏をそっと撫でてやると足の指が扇状に開く「バビンスキー反射」は、生まれてすぐの一定期間見られますが、やがてなくなります。赤ちゃんが大きくなってからもこの反射が見られる場合には、中枢神経系に何か問題があると見なされます。このように身体的な問題を知る手掛かりとして研究されてきた反射もあるのです。
 3ヵ月程度で首がすわり安心して抱っこできます。暫くオモチャを掴んでいる事ができます。
 5〜6ヵ月で寝返りをします。手を伸ばして物を掴む事が出来ます。
 10か月程度でつたい歩きを始め、早い子では歩き始めます。つまんだり、オモチャの自動車を走らせたりできます。
 1歳4月程度で走れる様になります。積み木を重ねたり、クレヨンでぐるぐる丸を書きます。 

(2) 新生児の視覚能力
 赤ちゃんの反射能力はわりあい早くから知られていましたが、新生児にはもっと素晴らしい能力が沢山あることがわかってきています。
 ハーバード大学ブラゼルトン博士は、生後 2 日目の赤ちゃんに赤いボールを見せると、それが目から近い距離であれば、赤ちゃんはしっかりとボールを目で追うことを観察しています。これまで信じられていたのとは違って、生後すぐの赤ちゃんでも、もう目がよく見えるのですね。
 1ヵ月程度で人の顔を見つめます。
 4ヵ月では、人に微笑みかけます。
(3) 新生児の聴覚
 新生児はしっかりとした聴覚も持って産まれてきます。ブラゼルトン先生は、振るとガラガラという音がする物を新生児の耳のそばで振ると、音のする方に首を傾ける赤ちゃんの様子を観察しています。よく音が聞こえているのですね。実は、赤ちゃんは胎内にいるときからしっかりと音を聴いていることがわかっています。

(4) 新生児の嗅覚
 新生児は匂いもよくわかります。オックスフォード大学のマクファーレン博士は、お母さんの匂いのついたガーゼとそうでないガーゼを用いて実験をしています。なんと生後間もない赤ちゃんは、お母さんの匂いのついたガーゼの方に鼻を向けるのです。匂いもわかっています。

(5) 新生児の味覚
 さて、味覚はどうでしょうか。ブラウン大学のプリシッド博士は、砂糖水を用いて実験をしました。ただの水と、砂糖の入った水とを吸わせると、新生児は砂糖水の方をよく吸うようになるのです。驚きましたね。新生児は味覚もしっかりしています。

(6) 新生児の皮膚感覚
 赤ちゃんの皮膚は弾力に富んでいます。皮膚という組織が保持している水分量が赤ちゃんの場合、際だって多く、これがマシュマロのような感触と弾性を生み出しているのです。
すでにお母さんの胎内にいる頃から、皮膚を介して酸素をはじめいろいろな物質を羊水の中に出し入れしてきました。誕生後も、皮膚は細菌の侵入を防ぎ、環境温度の変化を受けとめる働きをします。また、触覚・痛覚・温覚などの高感度なアンテナとしての機能を備えています。
 それがないと生きていけないという点で、皮膚は心臓・肝臓・腎臓などに劣らない重要な器官と言えます。名古屋市立大学の戸苅先生は、お母さんとの皮膚接触を「ことば」に置き換えている可能性があると言っておられます。生活場面でみても赤ちゃんはお風呂に入ったり、裸にされることや、体のあちこちを優しくなでてもらうことが大好きですね。きっと体全体でお母さんとコミュニケーションできるからなんでしょうね。
(7) 新生児の模倣能力
 視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚 (皮膚感覚) と見てきましたが、驚くのはこれだけではありません。きわめつけは赤ちゃんの模倣能力です。赤ちゃんはすでに人の「まね」ができるのです。お母さんやお父さんのうれしいときの顔、かなしいときの顔など、いろいろな表情を見てしっかり真似しています。
  9ヵ月では、おつむてんてんやバイバイの真似をします。
 10ヵ月頃から人見知りがでてきます。


2. こうした能力の意味
 このように新生児は五感や模倣能力をフルに働かせてこの世に生まれてくるのだということがおわかりになったことと思います。こうした力は赤ちゃんが生きて行くために必要な能力ですが、それにしても生後しばらくは世話されるだけの赤ちゃんにどうしてこのような能力が必要なのかと考えさせられます。
 実はこうした能力は、赤ちゃんが外の世界、すなわちお母さんやお父さんとコミュニケーションをするための能力として大切なものなのです。生後間もない赤ちゃんはすでに社会的な存在であると言えます。もう立派に人としての最も基本的な特性を備えているのです。
外の社会的環境、すなわち赤ちゃんを取り巻く人たち (当面はお母さんやお父さんでしょう) と関わりを持つことによって、赤ちゃんはやっと生命を維持することができます。そうした周りの人たちとの関わりを通して赤ちゃんはますます人らしく なっていきます。新生児の能力はこうしたコミュニケーションに欠くことのできないものと言えます。

3. 新生児のコミュニケーション
 では、赤ちゃんがお母さんやお父さんとどんな風にコミュニケーションしているかを近年の研究成果からみてみましょう。

(1) サーモグラフィーと母親の認知
 サーモグラフィーという便利なものが開発されました。離れていて温度が計れるもので、さしずめ、温度のビデオカメラと でも言えばいいでしょうか。これで赤ちゃんの顔の温度を計ることによって、赤ちゃんの微妙な気持ちの変化を知ろうとするのがサーモグラフィーの研究です。
 先ほども言いましたように、赤ちゃんは五感をフルに働かせて生まれてきます。この能力のおかげで生後間もない赤ちゃんでもよくお母さんを区別して知ることができるのです。これはサーモグラフィーを用いた研究で明らかにされています。
 赤ちゃんににこやかに話し掛けていたお母さんが急にいなくなります。赤ちゃんは不安になりますが、やがてお母さんが戻ってくるとまた落ち着きます。これは赤ちゃんをただ見ているだけではよくわかりませんが、サーモグラフィーを用いて顔の皮膚温の変化を観察すると、お母さんの行動の変化と皮膚温の変化が同調しているのがよくわかります。お母さんがいなくなると赤ちゃんの皮膚温はみるみる下がります。そして、お母さんが戻ってくると皮膚温が上がりもとに戻っていきます。赤ちゃんはしっかりとお母さんを認識しているといえます。これはコミュニケーションの始まりです。

(2) エントレインメント
 「同調」というのが新生児のコミュニケーションの基本にあるようです。お母さんが話し掛けると、赤ちゃんは大はしゃぎしますが、よくみるとそのリズムや身振り表情はお母さんによく似ています。先ほど新生児は模倣ができるといいましたが、そんな風に見えます。これは、赤ちゃんがお母さんの動作に引き込まれているのです。「エントレインメント」 (小林登、国立小児病院) と呼ばれる現象です。実は、お母さんも赤ちゃんに引き込まれます。エントレインメントは一方通行ではないのです。コミュニケーションとはそうしたもので、相互作用なのですね。

(3) プレジャーサイン
 もう一つ、コミュニケーションの始まりで重要なものに赤ちゃんの出す声があります。お母さんに対して発する赤ちゃんの声を聞いていると、もう会話を思わせます。音声でのやり取りが実に早くから始まるのですね。
埼玉大学の志村洋子先生は、こうした音声のやり取りを長く研究されています。お母さんの声による語りかけに対して、赤ちゃんは少しずつ声で反応するようになります。やがてお母さんの抑揚のある語りかけに赤ちゃんも独特の抑揚のある音声で応えます。赤ちゃんが機嫌のよいときの反応です。「プレジャーサイン」と呼ばれるものです。まるで会話をしているかのように聞こえますよ。


4. 赤ちゃんからのメッセージ :
 赤ちゃんとのコミュニケーションを考える上で大切なことがまだいくつかあります。

(1) 泣き声
 ヒトの赤ちゃんの場合は、「鳴く」ではなく「泣く」と漢字で書きますね。これは動物とは違って、悲しいとき、何かを強く訴えたいときにのみに泣き声を出すからでしょう。
赤ちゃんは「泣くのも仕事」と言われるくらい、よく泣きます。最初はどうして泣いているんだろうと思えていたのが、赤ちゃんと関わる中で、少しずつその泣き声に意味があることがわかってきます。おむつがぬれたとき・おなかがすいたとき・こわいとき、などがお母さんにはわかるようになってきますね。
 こうした赤ちゃんの泣き方を泣き声の周波数で分析し、科学的に分類する試みがなされましたが、まだ結果は出ていません。どんな機械でも、お母さんの直感にはまだ勝てないようです。

(2) 笑うこと
 生まれたばかりの赤ちゃんの表情を見ていると、笑っているような表情をすることがあります。これは「一人笑い」と呼ばれ、笑筋だけでなく、他の表情筋が自由にあやつられることを意味します。すでに胎児期からこうした表情が見られ、「笑う」準備ができていると考えられています。
生後 2 か月から 2 か月半頃、うれしいとき、おもしろいときに、こうした筋を使って笑い顔をつくる「あやし笑い」現象が 見られます。あやし笑いは、お母さんや周りの人たちの笑い顔をコピーする学習を通して、身につけていくと言われています。笑いかける回数の多いお母さんの赤ちゃんほど、あやし笑いは早く始まるようです。
 さてみなさんの赤ちゃんの笑い顔は誰に似ていますか?
 4ヵ月程度で人に微笑みかけます。
 7ヵ月で、鏡を見て微笑んだり、話しかけたりします。

(3)言葉
 5ヵ月程度で、人に向かって声をだします。
 9ヵ月で「いけません」「ダメ」と言う言葉に少し応じます。
 11ヵ月で1・2語話したり、理解したりします。
 1歳で、ほめられたことがわかります。
 1歳2ヵ月で、「…して」の指示にしたがえます。
 1歳4ヵ月で、絵本の絵の名前を言えます。絵本を読んでもらいたがります。

まとめ
 新生児は素晴らしい能力をもってこの世に出てくることがわかっています。生後間もない赤ちゃんでも、五感は大人と同じようにフル稼働しているのです。これは、周りの環境、とくにお母さんやお父さんというような赤ちゃんの周りにいる大切な人をしっかりと把握し、それに対して働きかけ、人との関係を築き上げるために使われます。赤ちゃんは生まれたときから「社会的」な存在なのです。言い換えれば、周りの人たち、とくにお母さんやお父さんとコミュニケーションしようとしているのです。皮膚感覚は赤ちゃんにとって重要なコミュニケーションの手段であり、そのことからもスキンシップというコミュニケーションの大切さがわかります。泣き声や笑いは赤ちゃんからの重要なメッセージです。しっかりとそれらを受けとめ、それに応えることが大切です。コミュニケーションは一方通行ではないのです。それはキャッチボールのように双方向のやりとりなのです。



1歳6月児

[脳の成熟]
・脳が大人に近いかたちになってきます。
 出生時の 3 倍の重さになり、脳の中のいろいろな割合が大人の脳に近くなります。これからは神経細胞間のネットワークが主に作られていきます。
 そして、この脳の成熟を基盤に、いろいろな変化が目に見えてあらわれてきます。

[生活リズム]
 ・睡眠時間が 13 時間前後になり、昼寝はほぼ 1 回 ( 2 〜 3 時間) になってきます。
 ・おしっこの間隔が 2 時間を越えるようになります。

[運動能力]
 ・手をおろし、膝も曲がり、踵とつま先を交互につきながら、進む方向につま先を向け、まっすぐに歩けるようになってきます。目標をしっかりとらえ、かけよってきます。
  走ったり、階段を登れるようになります。ボールを蹴ったり、ジャンプしたり出来ます。
 ・おもちゃで遊んだり道具を使うなど、物を扱う力が充実してきます。
  2歳では、ミニカーや積み木を一列に並べる遊びをすることがあります。
  直線を引いたり、丸を描いたり出来ます。はさみを使って紙を切れます。

[表現する力]
 ・何でも「ワンワン」「チャーチャン」と言っていたのが、「ワンワン」「ニャンニャン」「カー チャン」「トーチャン」のように、言葉が増えてきます。
 ・自分が欲しいものや知っているもの を指さしたりするだけでなく、「おめめどれ?」「ワンワン どれ?」と聞かれたことに指さして答えられるようになります。
 ・大人への愛情、子供への愛情がひろがり、「しっと」や「ふざけ」も出てきます。名前もしっか りわかるようになり、周囲の強制に対しても「イヤ」と反抗し、何でもやりたがるようになります。いわゆる、「自我」が芽生えてきます。
 2歳になると「お父さん会社」「ジュース飲みたい」などの2語が繋がります。
  
[認識する力]
 ・まねをする力が充実して、あとから 一人でまねをしている「延滞模倣」ができるようになります。
・ものの共通点を見つけて同じなかまを区別したり、本物でなくても絵や写真でもわかったりするような「概念化」の力が備わってきます。この力をもとに、ごっこ遊び、見たて遊びが芽生えてきます。「ごっこ遊び」が出来ます。電話ごっこ、ママゴト。

[探索する力]
 ・お母さんとの十分な愛情の関係によって心が安定し、いろんなものへの関心や興味が発達し、お母さんから離れて、探索行動ができるようになります。これらの子どもの能力は、相互に影響しあって発達します。また、「概念の力」も備わって、ごっこ遊び、見たて遊びが芽生えます。感情の表現も複雑になりますから、大人ともっと深い情緒的なコミュニケーションが可能となります。わざとするいたずらやふざけ、困ったことに出会うとすぐに援助を求めたりすることが増えて、お母さんをはじめ周りの大人達も深く関わらざるをえなくなります。
 これらのことによって「社会性」が形成されていき、お母さんを中心とした狭い世界からより大きい世界を持ち始めます。言葉も増えてくるのですが、ただ数が増えるのでなく、概念化や象徴する力の裏打ちによって、ことばの質が変化し、理解する力も増してきます。
 また、自分は自分という「自我」も形成され、お母さんから少しずつ離れていきます。しかし、まだお母さんの姿や声かけ、あるいは愛用のタオルやお気に入りのぬいぐるみのような「代理のお母さん」といったものが必要な時期です。
 最後に少しまとまった形で 1 歳半ばの発達の姿をお話ししました。個人差もあるし、個性もあるでしょう。でも、「そういえば赤ちゃんぽさが抜けてきたな」、「何かしっかりしてきたな」と感じる時に 1 つの節目を越えたのではないかと思います。
 キラキラ輝く自我の姿に必ず出会うはずですから、これからもっと手がかかるかもしれないという覚悟も必要ですが、赤ちゃんを無事に卒業したということを大いに喜んであげて下さい。

3歳児

「運動面」
・ 三輪車をこいだり、足でけって進んだりして遊びます。前転や幅跳びもできます。
・ ヨーイドンでかけだすことができるようになります。
・ 片足を交互に出しながら階段を登れるようになります。
 
「物の見方や動作」
・ 縦と横の世界が分かり始め、積木で「おうち」や「もん」を作って遊ぶ様になります。これによってごっこ遊びなどが豊かになって行きます。
・「大きい - 小さい」「長い - 短い」「男の子 - 女の子」などの対比ができるようになります。
・ 鉛筆やクレヨンで一つの丸や十字が描けるようになります。
・ お絵かきで「おかお」のようなものを描いたりします。
・ 道具の使い方も上手になってきて「はさみ」や「おはし」も使えるようになります。

「社会性」
・ 言いきかせれば少し我慢しますし、楽しいことだと一度約束すると期待して覚えています。
・ 人見知りはだいぶんおさまりましたが、知らない人の前では後ろを向いたり目をつむったり、お母さんの陰に隠れたりして少し馴れるのに時間がかかます

「生活面」
・ おしっこが一人でできるようになり、おもらしもほとんど無くなってきます。
・ 食事もあまり大人の手をかけずに食べられるようになります。
・ ボタンなどはまだ難しいですが、服の脱着も一人でしたがるようになります。

「ことば」
・ 語彙が増えて簡単な文章が話せるようになります。「順番」の意味がわかります。
・「どうして?」「なんで?」などの問いかけが多くなります。説明の意味を理解し始めます。

「自我」の発達
1) 自我の発達の中での 3 歳
  生まれたばかりの赤ちゃんは、自分とまわりの世界の区別がなく、混沌とした世界の住人です。やがて人との関わりの中で母親の存在を知り、「自分」というものに気づいて行きます。まだ漠然とした「自分」ですが、1 歳過ぎ頃には「自我」が芽生え始めて、やみくもに自分の要求を押し通 すようなことも出てきます。その後いろいろな能力が発達してくるに伴って、芽生えた「自我」は、成長を続けます。そして、3 歳頃には他の誰でもない「自分」をしっかり意識するようになります。この時、「自我」は充実して、活き活きとした輝きを見せ始めます。
 しかし、できもしないのに「自分でする」と頑張ったり、頑固なまでに自分のやり方を押し通そうとしたり、親としては大変手こずってしまいます。それ故に3歳は「反抗期」と言われるのでしょう。これが 4 歳くらいになると、相手の立場が分かり、相手との関係で自分を抑えることもできる様になります。「聞き分けができるようになった」と言われるのがちょうどその頃です。

2) 世界の広がり
 自分というものが充実してくるとともに、家族の一員としての「自分」、○○ちゃんの友達としての「自分」というように、家族や兄弟や近隣の人との関係も分かり始めます。そしてこれまではお母さんとの関係が中心の狭い世界でしたが、この頃から世界がどんどん広がってきます、しかし3歳児の世界はあくまで自分が中心の世界なので、トラブルも多いのです。
 しかし、お父さんやお母さんに対して「イヤ」と反抗するだけでなく、お手伝いもしてくれますし、弟や妹に対して「嫉妬」するだけでなく、お兄ちゃんやお姉ちゃんになって助けてくれますし、お友達と「とりあいのけんか」をするだけでなく、やさしく分けてあげたり、貸してあげたりする こともあります。 
 このように、この時期の子ども達の世界はちょっとしたことで悪循環におちいりやすく、親も子どももイライラして、カーッときたりしやすいのですが、子ども達の心の様子を理解して、少しプ ライドをくすぐってあげることで、その力を良い方向に引き出すことができる世界でもあります。実際にはなかなか難しいことかもしれませんが、子どもの自我も尊重するという視点を持ちながらゆとりある接し方ができるといいですね。

※ 子どもの発達の様子は、神戸市総合児童センターの「母と子のふれあい教室」の教材と「遠城寺・乳幼児分析的発達検査」を参考にして作成しました。